成人歯科検診のススメ ~または小学校高学年、中学生、高校生のお子様がいらっしゃる保護者様へ~
左海歯科クリニック院長の左海です。
私は父の跡を継いで2008年6月に西宮市里中町で開業いたしました。
おかげさまをもちまして今日まで地域の皆様をはじめ多くの方々に支えられ、地域医療に少なからず貢献できているのかなと思っております。
さて、歯医者の息子として生まれた私ですが、皆さまは私の口の中に何本の虫歯があると思いますか?
ヒント・・・・父親は歯医者です。母は厳しく私を育ててくれました。私も立派かどうかはわかりませんが
歯医者になり、一般の方よりもちろん歯に関する知識は豊富です。歯磨きの大切さは誰よりも知っています。
毎日3回、かなりの時間をかけて歯磨きをします。
いかがでしょうか?・・・・・1本? 2本?くらいかな?
と思うでしょうか?
いいえ・・・
答えは・・・
12本です(笑)
お恥ずかしい告白です。もしかしたら今後の仕事に差し支えがあるかもしれません(笑)
むし歯が12本もある歯医者さんに自分の口の中を診てもらいたくない!
そう思うかもしれません。いや、きっと誰しもがそう思うでしょう。
しかしこれは事実ですし、歯科医師だからこそ正直に公表すべきだと思い告白させていただきました。
安心してください。もちろんすべて治療は完了しており、現在、虫歯はゼロです!!
でも・・・過去において今までトータルして12本の虫歯があったことは事実です。
ではここでもう一問クイズです。その12本の虫歯はいつ頃できた虫歯でしょうか?
父親は歯医者で母親も厳しくしつけてくれたわけでしょ?だから子供のころからちゃんと歯磨きをしていたはず・・・そのうち自らも歯医者になって歯の大切さを学んだはず・・・・・・?
ん? いつ虫歯になったの?
ちょっと回りくどくなってしまいすいません。
答えは12本の虫歯はすべて20歳までにできたものです。
さらに言うとそのほとんどは小学生高学年か中学生の時にできたと思われます。そして虫歯ができたことに気づかず、高校生、大学生と虫歯は知らず知らずのうちに大きくなっていったのです。
今でも覚えています。約20年前の話、私が歯学部3年生、22歳の時、学校が終わって家でお菓子を食べていたとき、突然、「ガリッ」という音がして口の中に小石のような食感を感じました。お菓子の中に異物が混入していたのか!?と思い、気持ち悪っ!と思ってぺっと吐き出しました。
そして出した異物をまじまじと見て大変ショックを受けました。「こ、これは小臼歯の上の部分!!」
小臼歯とは前から4番目、5番目の歯のことです。あわてて洗面所に行って口を開けると右上の4番目の小臼歯が全く無くなっていたのです!!少し欠けているとかでなくそこだけ全く歯が無いのです!歯抜けです(泣)
さすがに焦りました。すぐさま歯医者さんに電話して「歯がとれました!!でも全然痛くないんです!」と素人のようなことを言ったのを覚えています(まあ、当時の3年生なんて素人同然ですが)。
慌ててどこでもいいと思って電話した歯医者さんはとても良い先生でした。
「君は歯学生か、よし!ちょっと全部しっかり検査してみよう!」
と言って全体が写るレントゲン(パノラマレントゲン)を撮られました。
そして、そのあと衝撃的な結果発表が告げられるのです。
「虫歯いっぱいあるね。1,2,3,4,5,6,…….12か,12本あるね!」
圧倒的1位でした。別に誰とも争ってないのですが。
全く予想外なことが起こると全身がヒヤッとする感覚、わかりますでしょうか?
同時に厄介なことになったなとも思いました。まだまだ歯科の知識がない時期でしたが、歯科治療は回数が多くかかることくらいはよく知っていました。
一体今まで僕は何をしていたんだろう!?この時になって初めて冷静に思い返すのです。
「歯磨きって今までどんな感じでしてたかなあ?」すごく素朴でありながら難しい疑問です。
正直、日によっては夜寝る前の歯磨きをしないこともあったような・・・・
そうです、「歯磨き」について生まれてこのかた真剣に考えたことなんてありもしなかったのです。
この時を境に、私は歯医者さんに通院し、心を入れ替え入念な歯磨きを毎日するようになりました。
この20年間で日本人の歯に対する意識は大きく変化してきたと思います。小児の虫歯は減少し、80歳までに20本の歯を残しましょう!を目標に掲げられた8020運動はもうすでに達成されています。
ですので、先ほどの私の虫歯のエピソードが現在にぴったり当てはまるものではありません。
しかし、私も開業して14年、多くの患者様のお口の中を診てきて思うことがあります。
それは、22歳の私と同じ状態、虫歯がいっぱいある20代の方がとても多いということです。
20歳前後の患者様はたいてい歯が少し欠けたといって歯医者さんを訪れます。問診すると「欠けたので物が詰まるが痛みはないです」と言います。ところがレントゲンを撮ってみると驚くほど大きい虫歯になっていることが多いのです。痛みはないのにすでに虫歯菌は歯の奥の神経まで侵してしまっているのです。
「ほかにも虫歯があるかもしれないからレントゲンを撮りましょうか」
20年前に私の虫歯を全部治してくれたあの先生と同じセリフを言わなければなりません。
そして結果発表・・・・
ショックを受ける方が半分、あまりピンと来ない感じの方半分くらいでしょうか?
12本もの虫歯が出来てしまったことで父親を恨んだことはありません。事実父親は悪くないと思います。
昔の歯医者さんは忙しかったですし、仕事が終わってクタクタなところでさらに我が子のこととはいえ歯を診たくはなかったでしょう。母親だって義父の介護などで忙しくしておりましたし、だいたい小学生高学年にもなれば仕上げ磨きなどおそらく私の方が拒否していたでしょうし、中学高校生になれば自分で歯磨きするのが当たり前です。未成年とはいえ責任はやはり当時の本人、私が悪かったのです。
しかし、私は思うのです。3歳児健診が定着したことにより小児の虫歯が減りました。そして8020運動が広まったことでその目標が達成されたのです。であれば青年期の虫歯予防も啓蒙し、徹底すれば私のような思いをしなくてもいい虫歯のない若者が増えていくと思うのです。
乳歯の虫歯が減ったという事実で、世の歯医者さんもご両親も本人も油断をしてしまって実は一番大事な6才臼歯(永久歯)を早い段階で虫歯にしてしまっていたのではと思うのです。
全身の健康を長く維持するには若いうちからしっかり予防しておくことが大事になります。
現在西宮市では、「成人歯科検診」を実施しております。20歳を迎える市民の皆さんに無料の歯科検診受診券
が郵送されます。当院でも無料成人歯科検診を承っておりますので是非この機会に受診していただくことをおすすめします。
そして、小学校高学年、中学生、高校生のお子様がいらっしゃる保護者様には是非、お子様に歯の大切さを説明してあげて、定期的に歯医者さんに通うようにしてあげてください。